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たかがマウスピース、されどマウスピース たかがマウスピース、されどマウスピース

Chapter 06

シニアダイバーの方へ

シニアダイバーが快適にダイビングを楽しむために。入れ歯・歯周病・ドライマウスとマウスピースとの付き合い方を解説します。

海外でダイビングをすると、白髪の白人のおじいさんやおばあさんがマリンスポーツを楽しむ姿をよく見かけます。 ダイビング先進国といわれる、オーストラリアやアメリカでは、中・高齢の方が退職後のレクリエーションとしてダイビングを選択されることも多く、このシニアダイビングが中高齢者のライフスタイルの一つとして確立しているようにも見えます。

日本における中・高齢者ダイバー

今、日本でも65歳以上の高齢者を含むシニアダイバーの増加が注目されています。また、近年のシニアダイバー増加に伴い、健康管理やインフラ整備の重要性が注目されはじめています。

一方、中・高齢者ダイバーが中心となって活動しているシニアダイバーズクラブを始めとして、高齢者を含むシニアダイバーが、より快適にダイビングを楽しむことができるような環境が広がってきています。

各年度毎のエントリーレベルCカード発行枚数
ダイビング産業に関する調査研究報告書より(レジャースポーツダイビング産業協会)

高齢者ダイバーとマウスピース

これまでの調査で、多くのシニアダイバーの方々が、歯周病や入れ歯などお口のトラブルのせいで、ダイビングを十分楽しむことが出来ないでいる現状が明らかになっています。

スキューバダイビング用マウスピースの多くは、歯で噛んで支える構造になっているため、歯がなくなったり弱くなった中・高齢者の中には、マウスピースを上手く支えられない方も多く、このことがスキューバダイビングを安全に、快適に楽しむ上で大きな障害となっていることが多いようです。

入れ歯とマウスピース

「入れ歯のせいでしっかりマウスピースを支えられない!」
「ダイビングのとき入れ歯が割れないか心配!」

シニアダイバーの方々を対象に調査した時、このようなご意見をお持ちの方が多数おられることがわかりました。

一般的なマウスピースは、前から3番目、4番目、5番目付近の歯で噛んで支えるように出来ています。入れ歯を入れている方の中でも、この「3、4、5番目の歯」がなくなって入れ歯にしておられる方は、入れ歯の部分でマウスピースを支えることになるため、問題はより深刻になります。

これまでの調査でも、この3、4、5番目の歯がなくなっている方のほとんどが、入れ歯を入れてダイビングをしており、またこのような方は、ダイビングに際して特に入れ歯に不満を感じておられる方が多いことがわかっています。

入れ歯をいれておられるシニアダイバーの方へ

入れ歯を入れてダイビングをされるシニアダイバーの方は、特に以下の点に注意して下さい。

入れ歯については

  1. 割れにくく強度の高いものを作ってもらうようにして下さい。
  2. 紛失や破損に備えて、できればスペアの入れ歯を準備してください。
  3. 歯科医院で入れ歯を作ったり調節する時には、いつも使っているマウスピースを持参した上で歯科医師に相談してください。

マウスピースについては

  1. マウスピースは軽くかんで支えるようにしてください。
  2. マウスピースはできるだけ奥歯でもかめるようなものを選んでください。 奥歯でもかめるマウスピースについては、「いろいろなマウスピース」の写真から、【プラットフォームの長いもの】を選んでみてください
  3. 噛まなくても支えやすくなっているマウスピースを選んでください。 かまなくでも支えやすいマウスピースについては「いろいろなマウスピース」の項目から【お湯で柔らかくして歯形がつけられるもの】を選んで下さい

歯周病とマウスピース

歯周病とは、歯の周りについた細菌が出す毒素のせいで、歯ぐきがはれたり、歯を支えている骨が溶けてしまう病気のことです。少し前までは歯槽膿漏と呼ばれていたこの病気、最近では“歯周病”と呼ぶことが多くなってきています。

歯周病になると歯を支える骨が少なくなりますから、歯がぐらぐら動いたり、痛んだりしてしっかりかむことができなくなります。またこの歯周病は、強い力が歯に加わることによって悪化する可能性が高くなります。

このために、歯周病を患っているダイバーは、マウスピースをしっかり支えられなくなったり、マウスピースを強くかむことによって、歯周病を悪化させてしまうことがあります。

35歳以上の成人の実に80%以上がこの歯周病を患っているという報告もありますから、シニアダイバーだけに限らず、多くのダイバーが歯周病について無関係ではないと言えるでしょう。

特にダイビング中に、マウスピースをかんでいる歯がうずいたり、ダイビングの後歯が浮いたように感じるダイバーは要注意です。

歯周病と診断されたことのあるダイバーの方へ

歯科医院で歯周病と診断されたことのあるダイバーは、先ず歯周病の治療をしっかりと受けてください。

歯周病は高血圧や糖尿病と同じような慢性疾患であると言われており、短期間の治療で治る病気ではありません。継続的な長期にわたる治療が必要となります。

特に歯周病を患うダイバーが、ダイビングをしてはいけないというわけではありませんが、少なくともダイビングによって歯周病を悪化させるようなことは避けたいものですね…。

そのために大切なことは、マウスピースを強くかみしめないということがとても大切です。

できるだけたくさんの歯で支えることができ、強くかまなくても支えられるマウスピースを選ぶようにしてください。(かまなくでも支えやすいマウスピースについては「いろいろなマウスピース」の項目からお湯で柔らかくして歯形がつけられるものを選んで下さい)

口腔乾燥症(ドライマウス)とマウスピース

一般に加齢がすすむと、唾液の分泌量が低下し、口の中が乾燥しやすくなります。また、加齢以外にも唾液を作る組織や、唾液を通す管に問題がある場合、鼻にトラブルがあって口でばかり呼吸をしているような場合などにも、口の中が乾きやすくなります。

これらの原因により、口の中が乾燥した状態が続くことを【口腔乾燥症(ドライマウス)】といいます。ドライマウスになると、口の中や舌がひりひり痛んだり、虫歯になりやすくなったりするといわれていますが、特に高齢者のダイバーは、このドライマウスに対する注意が必要です。

入れ歯を作るとき歯医者は、口の中が唾液で濡れている状態を想定して作っていますが、口の中が乾いた状態で入れ歯を入れると、日常的には問題のない入れ歯であっても、異物感や痛みを感じやすくなります。このため、しっかりとマウスピースを支えられなくなったり、船酔いしやすくなったりします。

先ず、ダイビング前には出来るだけ水分を十分補給するよう心がけましょう。

それでも改善が認められないような場合には、吸い込む空気に湿り気を与える装置のついたレギュレターや、ダイビング中に口を湿らせることの出来る水筒を購入するなどの対応が必要となるでしょう。

また、口に潤いをあたえるジェルなどもたくさん市販されていますので、これを随時利用するのもいいかもしれませんね。